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素敵に暮らす 住まいの作り方

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住まいの「耐震」について

   震災の後、千葉県に住むOさんから 「住まいの耐震」について質問が来ました。

築35年(1976年竣工)の自宅のリフォームを考え始めていたそうですが、
今回の地震では、かなり揺れて屋根の瓦が一部崩れたそうです。

リフォームは、家の耐震化までは考えてはいなかったそうですが、
今回のことで、耐震工事をやるべきかどうか悩んでいるとのこと。
「費用があまりかからなくて 効果がある方法はありますか。」という質問です。

Oさん考えているリフォームは以下のようなものでした。

    お風呂、洗面所、キッチンを取り替えて、リビングとダイニングには
    床暖房をつけたい。1階の床の段差を極力なくしてバリアフリーにする。
    できれば間取りを少し変更して住みやすく、収納も作りつけに。
    更に予算が余れば、今のサッシをペアガラスのサッシに変えたい。

Oさんは1階の多くの部分の床をはがすようです。
このような工事をする時は、床下の状態を見て
予算の優先順位を計りながら家の耐震補強ができるいい機会です。

私は今回 Oさんが耐震リフォームまで考えるのは、
タイムリーなのではないかと思いました。

特に屋根の瓦に損傷があったのですから、同じぐらいの地震が来た場合に、
また同じような揺れがあることを考えると、有効な手立てを打つのは
今後の暮らしの安心にもつながります。

ところで、耐震診断設計をする場合、実際には現状の家の安全度の評価を数値化した上で、
リフォーム後の安全度の評価を上げるような設計をするのが基本です。

また、耐震の考え方は、
  1.地盤と基礎の部分   2.その上の木軸の部分
に、分けてそれぞれの評価を上げて行くように考えるのが一般的です。

しかし、私は耐震設計は評価点だけを求めることが目的ではないと考えています。
耐震診断を行うことで、家屋の弱点が見えたり、改善点が明確になるので、
結果として具体的な対策をとることができる、ということが大事で、
それを限られた予算内で有効に行うことが課題なのだと思っています。

・・・・そんな観点から、本題に入りますが、

リフォーム時には床下の断熱性を高めたり湿気を解消するために
床下の土の部分に防湿シートを敷いて、コンクリートを打設する工事もよく行います。

この時、コンクリートに鉄筋を配列して現在の基礎と一体にすれば、
布基礎が、べた基礎となって、地面と接する部分が建物下の部分全体の「面」になり、
建て物の重さを地面全体で受けることができるようになります。

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こうすることで、地震の揺れに対しては建て物が一体の動きになるために、
部分的に力が集中したり、地盤が弱いところなどに不動沈下が起こったりして
建て物側に亀裂が入ることを防げます。もちろん揺れも軽減され、
結果として、屋根や樋等の部分の損傷も防げたりするわけです。

また、耐震化には柱や筋交いと基礎との筋結が重要です。
床下の今の状態を見ながら、金物を選定していくことができますし、
万が一、基礎が無筋の場合には今の基礎に新しく鉄筋を入れた
基礎を沿わせて、補強することも可能です。

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      立ち上がり鉄筋部分にコンクリートを打ち基礎を既存部分と一体にする

実は1981年以前に建てられた住宅では、無筋部分の基礎がある住宅があります。

ところで、Oさんは予算が許せば、間取りの変更も、とお考えのようです。
基礎の上の木軸部分にバランスよく、筋交いや耐力壁を配置できる
プランを、基礎の部分と一緒に考えれば更に、有効な耐震リフォームに
なるのではないかと思います。
 
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そんなこんなでペアガラスの予算がなくなってしまうかもしれませんが、
今のサッシにアタッチメントをつけてガラスを2重にすることができます。
エコポイントもつきますのでご検討ください。

上の写真はすべて津田沼の家ですが、地盤が軟弱だったために、
3年前に耐震を兼ねたリフォームをしたお宅です。
今回、この地域では液状化現象があちこちに見られたそうですが、
こちらのお宅では建物下の液状化は免れており、ホッとしました。

以下は「住まいの耐震」の補足です。

日本では、1978年に起きた宮城県沖地震の被害状況をうけて、
1981年(昭和56年)に建築基準法が新しく改定されました。
これがいわゆる、「新耐震設計法の導入」と呼ばれるもので、
木造住宅の、地震力に対しての床面積あたりの必要壁長さや、
壁の構造の規定(軸組の種類・倍率)が大幅に改正されました。
この、「新耐震設計基準」による建物は、1995年に起きた
阪神淡路大震災においても被害は少なかったとされています。

だからこの 確認申請時が1981年新耐震以降の建物か否か、
は耐震を考える時に、大きな目安になります。

その後、2006年に施行された改正耐震改修促進法によって、
新耐震以前の設計で建てられた特定の建物には 耐震診断や 改修が義務づけらましたが、
主に公共生のある建築に対してで、木造住宅は該当していません。

木造戸建て住宅の耐震化は、自治体の補助などがある場合もありますが、
持ち主に委ねられているのが現状です。

ところで、1981年の後の2000年にもさらに木造住宅に関する建築基準法の改正があり、
新築時には以下の3つの基準が明確にされました。
現在の、既存住宅に対する耐震診断と設計もこの基準が指針となっています。

①地耐力に応じて基礎の構造を以下の3つに指定。
  ・基礎杭  ・べた基礎  ・布基礎も可能 
 (これによって地盤調査が事実上義務化になりました。
 ほとんどべた基礎ですが、杭を打つ建物も増えています。)

②構造材は場所に応じて継手・仕口の仕様を特定され、
 筋交いや、耐力壁の端部、基礎との筋結金物の仕様が明確化、必須になる。

③耐力壁は計算によってバランスよく配置する。

私も新築住宅の設計に加えて、リフォームの耐震設計では上の考え方を基準にしています。
以上長くなりました。今回はちょっとわかりにくかったかもしれません。
ご意見をいただければ幸いです。
 
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震災から3週間が経ちました。せっかく助かった命なのに、 長引く避難生活で落
とされる命が後を絶たないとのこと・・・・。 祈ることしかできず、悲しいです。

実は津波は免れたものの、水をもらいに行くためのガソリンがなかった両親を
しばらく避難させていました。放射線も心配でした。
が、毎日母は、「家に戻りたい」と言うのです。
どんなことがあっても 自分の家や地域が一番、と思えることは
幸せなことなのだとつくづく思いました。

原発周辺に家があって、避難生活をしている方たちの苦悩を思い、 辛くなります。
戻りたくても戻れない現実と、これからの生活の狭間で
苦渋の決断を迫られる時期に来ている方も大勢います。

高校時代の友人が自分とご主人との4人の両親を連れて、楢葉町から避難していました。
先週、とりあえず埼玉に家を借りた、という連絡をもらいました。
「将来が見えなくて、不安や、悲しさ、怒りがあるけど仕方がない。」と言っていました。

早く原発が収束して復興に向かってほしいと願うばかりです。



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